中学総合講座「生きること 働くこと 考えること—ゲストを交えて拓き合う 」 第4回
2017.03.14
総合講座の第四回目は、「芸術の力のありかを求めてー絵と写真の交差から」というテーマで、画家の片山高史さんと、写真家の喜多村みかさんのお二人をお迎えして、お話を伺いました。
まずお話しいただいた片山さんは、岡山県出身で、独学で絵画の制作をしておられ、美大には行かずに表参道の路上で絵を売るところから始めて、数々の賞を受賞されています。
絵画に興味を持ったのは、小学校のときに何も知らずに見た、戦争の悲惨な光景を描いたピカソの『ゲルニカ』を「面白く感じてしまった」ことが最初のきっかけだったそうです。また、過去にいじめられた経験から、「絵は誰にも邪魔されず、自分の世界を守ってくれるもの」だと感じ、BEATLES の ACROSS THE UNIVERSE の歌詞にある「Nothing’s gonna change my world.」という言葉に非常に共感したことも影響していると話されていました。
また、「昨今はインターネットでの検索により、様々な情報に即座に簡単に触れることができるため、絵画や海外の風景なども、「本物」を実際に目にしなくても画像で見られてしまう。それは芸術家にとってあまり好ましくない状況なのではないか」というある生徒の質問に対し、「検索して出てくるものは他人の経験」であり、「自分が実際に得たものこそが、実は自分の役に立つもの」だと答えました。このことに生徒は深く感銘を受けたようで、「なんでも検索して知っているような気になっていたが、そうではないのだと気付かされた」と話していました。
次にお話を伺った喜多村さんは、福岡県出身で、写真家として国内外で個展を多数開催され、写真集も出版されています。
写真家を志望された最初のきっかけとして、ご実家がお寺であり、幼少の頃から信者さんがお参りにくるのを見ていて、「人は、確かな価値がないものにでもお金を払う」と気づいたこと、また、ある写真家のアウシュヴィッツ収容所の写真集を見てそれに衝撃を受けたことなどをお話しされました。
さらに、喜多村さんは、音楽や絵画でなく、写真の道を選ばれた理由として、「どうしても上手くいかないかったから、この道を続けてこられたと思う」と振り返りました。この点について、ある生徒は、「喜多村さんのおっしゃっていたことについて思い当たる節がある。第一回の『苦手なことでもチャンスだと思って前向きに挑戦する』ということだ。この話を聞いたことで、より自信が持てるようになった」と発言していました。
最後に、喜多村さんは、写真家として、「どうしようもできないことーくるしみ /たのしいこと、おもしろいことーたのしみ」について、考え続けることが自分の使命だとおっしゃり、生徒たちに対し、芸術を生業とする職業に限らず、どんな職業に就くとしても、「感情が動くことに雑にならないでほしい」「率先して楽しみ、率先して悲しみ、感情の揺れを無視しない」というメッセージを伝えていただきました。
以下に授業を受けた生徒の感想を引用します。
「片山さんからは、言語や文化、宗教が違っても絵によってコミュニケーションがとれるということには、絵以外にも写真や音楽にも通じることだと思いました。さらに、与えられた問題を解くだけではなく、自分で問題を発見する能力が必要になってくるということがわかりました」
「写真や絵のように、お金で表しにくいものはなかなか理解しにくいので、お金で価値を表すことに慣れすぎているなと思った。必要なものだけを求めていってもあまり面白くないと思うので、不必要なものをあえて探してみるというのも面白いと思った」
「どちらにも共通して言えることは、『作品は、作り手から離れ、受け手側のものになる』ということだ。絵も写真も、受け手が感じることは一つではない。芸術には、学問とはまた違った可能性があることを感じた」
最後になりましたが、大変ご多忙な中、生徒たちのためにお話しくださったお二方に厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
最終回は、「構造設計建築士として生きるー建物のデザインと安全な建物にすること」というテーマで、構造設計一級建築士の坂田涼太郎さんをお迎えしてお話を伺います。